軍師二人

軍師二人 (講談社文庫)

軍師二人 (講談社文庫)

1+1=1以下・・・?

大阪の陣は関ヶ原以上に豊臣家側の悲劇のヒーローが形成されている。
その中の真田幸村後藤又兵衛が主人公の物語。

互いに優れた戦術眼をもった天才ゆえに考えを譲らず、幕府軍に各個撃破されていく有り様が描かれる。

もっとも悲劇なのは彼らを活かせる主君がいなかったことだろう。
ボスとなるべき大野治長は互いの案をそれぞれ採用して二つの作戦を同時実行するといういかにも日本的な大岡裁きを行う。

ありがちだが、これでは劣勢である豊臣がたに奇跡は起こせない。

豊臣がたに必要なのは奇跡だったのである。
それは個性強い才人達が一致団結して倍にも乗にも力を発揮することであっただろう。

しかし1+1は2にも4にもならず1以下になってしまった。

ボスがいなかった豊臣方は又兵衛、幸村が次々と討ち死にしていくこととなる。
その死に様は後世に語り継がれる美談となるわけだが、あくまで孤軍奮闘というものでもあった。

(又兵衛は又兵衛の死に場所で死ね)

真田幸村の心中として語られた言葉である。

意思決定やチームビルディングの難しさと、大将というものこそ真に稀有なものであるということを司馬遼太郎は示しているように感じた。