おれは権現

新装版 おれは権現 (講談社文庫)

新装版 おれは権現 (講談社文庫)

玉の輿に乗れた人と乗れなかった人

猪武者可児才蔵と、彼の力を上手く利用して財産を手に入れた男と手に入れられなかった女の物語。

男は可児を一人前の武者に仕立て上げそつなく自らの利を確保した。才蔵が自分を権現として見立て、一本気で無口な武骨者であるころだ。

女は才蔵が年老いて心のたががはずれてしまった時にチャンスをつかんだ。
しかし才蔵は最後に権現に戻り死を迎えて、努力は水泡に帰した。

彼女は自分の一生がいったい何であったかと考えたとき、おそらく死ぬまで答えがでなかったろう。もっとも人間たれしものことで、彼女だけとはかぎらないが。

結びの文章だが悟りの境地を感じた。肩肘はらずに生きていこうよというエールとして受け取った。